教授リレーエッセイ

縦糸の医学、横糸の医学、ヒトの繋がりも縦糸と横糸 呼吸器・免疫内科学 熊ノ郷 淳

呼吸器・免疫内科学
教授 熊ノ郷 淳

「夢見て行い、考えて祈る」など、多くの素晴らしい言葉を残された故山村雄一先生(元大阪大学総長)ですが、よく薬理学の講義の際に「縦糸の医学と横糸の医学」と語られたそうです。

呼吸器学、循環器学、血液学、皮膚科学、眼科学、消化器学など、所謂、臓器別の医学は「縦糸の医学」であり、生化学、生理学、免疫学などは縦糸を繋ぐ「横糸の医学」で、この両方が医学に必要という意味だと解釈しています。ややもすれば、専門性に特化されすぎるきらいのある昨今、この言葉のもつ深さを感じます。

研修医制度が変わって以来、多くの薬理学生は入局を経ずに卒後いろいろな研修施設に散らばっていきます。5月、6月は教室のリクルートのための関連研修施設の施設紹介の会が続きます。口コミも含めていろんな情報を集めて薬理学生は進路を選び、また研修先という新しいコミュニティの中で新しい人間関係を作って行くのでしょう。自分が歩んでゆく過程で、しっかりと人間関係、ヒトの繋がりを築いていくことはその子のかけがえのない「縦糸」の財産になります。ただ、ヒト一人が一生の内で出会える人の数は限られています。縦糸しかない子が5年後、10年後に指導者となったとき、その子が指導する若い子達に限られたネットワークしか提供してあげられません。縦糸は大切ですが、縦糸はどこまで行っても縦糸のままであり、決してそれだけでは次の世代を包み発展させることができる「布」になりません。

クリクラ実習など、いろんな機会で若い薬理学生と話をしたり、進路相談を受けたりする機会がありますが、その際よく「阪大薬理学のネットワークを十分意識すること。(臨床に進むなら)どこに行くにせよ早めに入局したほうがよい」と話しています。そうすることで、ヒトの繋がりにおいても「縦糸」「横糸」を紡ぐことができるからです。直接会ったことのない先輩・後輩とも繋がることができ、その子が5年後、10年後指導者になったとき、また次の世代を大きなヒトの繋がりの中で、導いてあげることが出来ると思うからです。

微力かもしれませんが、「縦糸の医学、横糸の医学、ヒトの繋がりも縦糸と横糸」、念仏のように繰り返し、繰り返し、若い薬理学生に伝えて行きたいと思っています。

教授 熊ノ郷淳
内科学講座 呼吸器・免疫内科学
人の輪をどんどん広げていけるよう、そして次の時代を担う若い人たちが元気に育っていけるよう、医学・医療を一歩でも先に進ませるよう全力投球して参りたいと思います。