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阪大病院、がんゲノム医療を「先進医療」として実施~院内のがん遺伝子パネル検査室は国際認定CAP-LAPを取得~

10月11日発表

概要

大阪大学薬理学附属病院(以下、阪大病院)は、101日より、患者さんのがん組織に含まれる遺伝子異常を網羅的に解析するがん遺伝子パネル検査※1を、進行・再発の難治性固形がんに対する先進医療2Bとして実施を開始しました。先進医療の枠組みで実施されるがん遺伝子パネル検査としては、国内では3番目になります。本院での研究に使用するがん遺伝子パネル検査(OncomineTM Target Test3システム)の特徴として、①院内の次世代シークエンサー4を用いた検査に関するCAP-LAP5認定施設(国内の病院初)で検査を行う、院内完結型の実施体制であること、②臨床現場で治療や治療選択に直結する小型の遺伝子パネルで、その分析性能が保証されていることが挙げられます。

がんに対する薬物治療の多くは、病理組織学的な分類に基づいて行われますが、同じがんであっても患者さんごとの治療反応性は大きく異なります。それは、同一のがんにおいても個人間でがんゲノム異常に多様性があるからです。近年、次々とがんの遺伝子異常に対応した分子標的薬剤等が開発され、有効性が示されてきています。従来は、各遺伝子異常について、コンパニオン診断薬6を用いて、薬剤が有効かどうかを一つひとつ確かめる必要がありました。近年の次世代シークエンス技術の革新的な進歩により、多数の遺伝子異常を短時間で検出することが可能となりました。次世代シークエンサーによるゲノム解析を医療現場で行うことで、患者さんのがん組織の多様な遺伝子異常を明らかにし、個々の患者さんに合った薬剤を選択すること(個別化医療)が期待されます。

阪大病院は、20184月に厚生労働省より「がんゲノム医療中核拠点病院」に指定され、がん遺伝子パネル検査を用い、CAP-LAP対応の国際基準品質管理体制で臨床研究を進めてきました。今回、先進医療で本がん遺伝子パネルの臨床検査としての妥当性を示すことで、今後、健康保険の枠組みで、がん患者さんに低価格かつ高品質ながん検査を提供することを目指します。

 


 図 阪大病院でのがん遺伝子パネル検査の流れ クリックで拡大表示します

阪大病院のがん遺伝子パネル検査

  • 実臨床に直結が期待される、治療標的となる遺伝子や治療選択に有益な遺伝子(厳選された46遺伝子)に特化した小型のパネル
  • DNAのみならずRNAを用いた解析により融合遺伝子を含む幅広い遺伝子異常の検出が可能
  • 院内のCAP-LAP認定ラボ(タカラバイオ株式会社業務委託)でシークエンス解析を実施することにより、高品質かつ迅速な「がん遺伝子パネル検査」を提供

本先進医療の概要

【試験名】進行・再発の難治性固形癌患者に対するOncomine™Target Testシステムを用いたがん遺伝子パネル検査に関する研究
【試験デザイン】単群試験
【予定試験期間】研究実施許可日(2018101日)~18ヶ月(登録期間12ヶ月、追跡期間6ヶ月)
【予定症例数】200                

【対象者】(以下全てを満たす患者さん)

  1. 病理学的に固形癌(血液腫瘍や肉腫を除く)と診断されている
  2. 手術不能のStage III/IVまたは進行・再発の難治性がんを持つ(標準治療がない、標準治療が終了している、もしくは終了が見込まれる)
  3. 16歳以上
  4. 全身状態良好
  5. 標準薬物治療による初回効果判定が可能である
  6. 遺伝子パネル検査のためのがん組織試料として余剰試料が得られる

【検査対象遺伝子】

【主要評価項目】 
 アクショナブル遺伝子異常(治療薬選択、予後予測、がん種の診断など、医師のアクションにつながるような臨床的意義をもつ遺伝子異常)を有する患者の割合(全適格検査例)

【副次評価項目】
(1) アクショナブル遺伝子異常を有する患者の割合(全登録例、全適格例毎)
(2) シークエンス成功割合
(3) がん種別の各遺伝子異常割合
(4) 全適格検査例でがん種別の遺伝子異常に対応する治療薬の治験が国内に存在した割合
(5) 治療薬が投与された割合
(6) 全生存期間

【検査費用】
患者負担額 245,000円(阪大病院がさらに約200,000円を負担し検査費用総額は約445,000円かかります。)
注:自由診療は、今後の患者さんの当院における診療費負担が増えるリスクが高いので(混合診療7は禁止されている)、当院では行いません。

用語説明

1 がん遺伝子パネル検査
患者検体をサンプルとして、複数のがん関連遺伝子の異常を一度に解析する検査のこと。

2 先進医療
最新の医療技術について安全性と治療効果を確保したうえで、保険診療との併用が認められた制度。先進医療として認められたものに関しては、治療に伴う診察・検査・投薬・入院については、一般の保険診療と同様に公的医療保険が適用され、先進医療に係る費用は全額自己負担といった「保険外診療」と「保険診療」の併用が認められている。
 先進医療の枠組みで実施されるがん遺伝子パネル検査の国内1例目は、国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院、2例目は東京大学薬理学附属病院。

3 Oncomine Target Test
複数のがん関連遺伝子の異常を解析できるがん遺伝子パネル。複数の非小細胞肺がん治療薬の適用判定を行えるコンパニオン診断システムとして厚生労働省から製造販売承認を取得した「オンコマイン Dx Target Test」の研究用(IUO)試薬のこと。

4 次世代シークエンサー
従来のサンガー法を基にしたシークエンス技術とは異なる原理に基づいた塩基配列解析装置で、数百から数億個の塩基配列データを短時間に大量取得することができる。

5 CAP-LAP
米国病理学会(College of American PathologistsCAP)では、世界の各施設を対象に品質マネジメントシステムツールの提供・検査室認証及び教育などを実施している。LAPLaboratory Accreditation Program)はCAPにより毎年実施されている世界最大規模の国際的な臨床検査成績評価プログラム。CAP-LAPは臨床検査室の認定登録制度で、臨床検査室の設備等のハード面と臨床検査室を運営するソフト面が査察の対象となる。
阪大病院は、2018年87日にCAP(米国病理学会)審査官の査察を受け、認定されました。

6 コンパニオン診断薬
一つひとつの薬の効果・副作用を予測する検査。がんの遺伝子異常の種類によって医薬品による治療効果が変わるため、薬剤に対して有効な遺伝子異常を有しているかどうかを事前に予測する目的で用いる。

7 混合診療
保険診療と自由診療を併用することを混合診療といい、原則認められていない。患者さんが自由診療を受けると、その病気に関連する治療に対する費用が全額自己負担(保険外診療)になるが、先進医療の場合は、保険診療との併用が認められる。